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2018.05.30コラム
GymAware:疲労のモニタリング

GymAware:疲労のモニタリング

【疲労のモニタリング】

◆原理

 アスリートが疲労しているかどうかは、トレーニングにおける筋力の一時的な低下から判断することができます。レベルの高い競技スポーツ選手においては、トレーニングや試合の頻度や強度が増すことに伴い、ある程度の疲労が生じることは仕方のないことです。しかしその疲労が過度に蓄積すると、オーバートレーニングやケガの発生する可能性が高まります。そこで選手の疲労度合を監視することは、ケガを未然に防ぎつつパフォーマンス向上を目指すための筋力トレーニングやコンディショニングにおける重要な役割の一つとなります。 

 疲労を追跡するためのひとつのよい方法は選手の垂直跳びを長期的にモニタリングすることです。垂直跳びには素早い筋力の立ち上がりと大きなパワー発揮が要求され、これらはどちらもモーターユニットの発火頻度と筋肉間コーディネーションに依存しています。集中的な高強度トレーニングを実施した後、「低頻度疲労」と呼ばれる神経筋疲労の状態が何日も継続することがあり、それによって爆発的筋力の発揮と最大下の負荷に対する筋力発揮が影響を受けます。疲労のモニタリングによって、コーチは選手の「疲労度合」を知るための手掛かりとなる情報を得ることができ、それに基づいて失敗しない適切なレベルのトレーニングを組むことが可能となるのです。

 

◆セットアップ

 疲労度合をモニタリングするためには、無負荷の垂直跳びを評価できるように、GymAwareを「Squat jump – countermovement 」に設定します。

 

詳細は「ジャンプテスト:パート1」の資料を参考にして下さい。

厳密なテストプロトコルを確立し、正確に何度も同じ条件でデータが取れるようにします。

試合と試合の間に設定した定期的な測定の時点で、選手に最大努力でのジャンプを実施させます。

 

ピーク速度と平均パワー(図2)が、パフォーマンスの変化と神経筋疲労の特に重要な指標となります。

 

選手の主観的疲労度を数値化した指標と筋肉痛のレベルを、疲労のモニタリング期間中に同時記録することも選手の疲労度合を正確に知る上で有効です(図1)。



図1. Taylor, 2012 に示された、通常のトレーニング(1-4週)、集中的高負荷トレーニング(5-8週)および回復期(9-12週)の疲労度合(A)と筋肉痛レベル(B)



図2.AFLに所属するオーストラリアンフットボール選手のGymAwareで測定した平均パワーのチーム平均とチーム全体の主観的運動強度との関係。トレーニング負荷が高くなると平均パワーが低下することが分かる。

 

◆コーチにとっての利益

疲労をモニタリングすることは、トレーニングを効果的に進めて行く上で極めて重要です。コーチが選手の疲労度合を正しく知るためには、様々なトレーニング刺激に反応する選手ひとりひとりの回復能力の違いについての客観的な情報を必要とします。選手の疲労状態を知ることで、進行中のトレーニングプログラムの効果をさらに高めたり、オーバートレーニングのリスクを回避したりするための修正が可能となるのです。

 

◆文献

・Taylor, KL. Chapman, DW (2012) Fatigue monitoring in high performance sport: A survey of current trends.

・Cronin, JB, Hanson, KT (2005) Strength and Power Predictors of Sports Speed. Journal of Strength and Conditioning

・Taylor KL, Hopkins WG (In review) Monitoring neuromuscular fatigue using vertical jumps.

・Taylor KL, Chapman DW (In review) Relationships between changes in jump performance and laboratory measures of low frequency fatigue.