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■2.ニードアナリシスとプログラムデザイン
年齢や種目によって誰にでも何時でも同じように効果を示すプログラムというものがもし存在すれば、ストレングス&コンディショニングコーチは必要なくなり、コンピューターソフトやマニュアル本が氾濫することになるのでしょうけれど、これまでの研究結果は、残念ながら(ストレングス&コンディショニングコーチにとっては幸いなことに!)そうしたプログラムは存在しないことを明確に示しています。

個人差と特異性
同一のプログラムを実施した場合の単関節筋力のトレーニング効果だけを見ても、年齢、性別、経験、筋線維タイプ、関節構造等の個人差によってその現れかたは異なります。また、栄養や睡眠、その他のプラクティスの実施状況等によってもトレーニング効果には差が生じます。全くウエイトトレーニングの経験がないにもかかわらず最初からスクワットで自分の体重の2.5倍くらいを軽々と挙げるような大学1年生もいれば、4年間努力してもそこまで到達しない選手も出るわけです。
さらに、エクササイズに含まれる関節の数と種類、姿勢、両側同時か一側性か、筋活動のタイプ(コンセントリック、エクセントリック、アイソメトリック、アイソキネティック等)トレーニングを実施するスピード、トレーニングが行われる関節角度や可動範囲等の条件によってトレーニングの効果が認められる条件は異なってきます。


 つまり、どのような条件でトレーニングしたかということがトレーニング後の特定条件での測定に影響するわけです。しかもこれらの組み合わせによって筋力発揮の特異性が異なることが明らかにされています。
また発揮筋力をピーク筋力で測るのか、動作中の平均筋力で測るか、それとも特定の関節角度や範囲における筋力を指標とするか、さらにはパワーや筋力増加率を問題とするのかによってもトレーニング効果の評価は異なる意味を持ってきます。

スポーツパフォーマンスの複合性
 このように、個人差および特異性に加えて、プログラムデザインを行う上でさらに問題を複雑にしているのは、トレーニングの最終目的が、単に筋力測定によって測定されるトルクやパワーやスピードやMRI上での筋の断面積それ自体ではなく、ジャンプ、スプリント、アジリティーといった運動能力テストで示されるパフォーマンス、さらには特定のスポーツ場面で示されるスポーツパフォーマンス、というように筋力要因だけではなく様々な複数の要因によって決定されることがらにあるという点です。

一例を挙げれば、スプリントのスピードを規定する要因を心理面や環境条件を除いて大まかに分類すれば、テクニック、筋力、柔軟性、身体組成、遺伝的特質(筋線維のタイプや関節のモーメントアームなど)の要因があると考えられます。そしてテクニックの領域はストライドやピッチの問題として、パワーや筋力増加率等の筋力領域あるいは股関節や足関節の柔軟性の領域と深く関係してきます。
ニードアナリシス
したがって、その種目のパフォーマンス向上に必要とされる筋力要因の特異性をその選手の個人特性を踏まえて明確にするというきわめて高度で専門的な知識を要するニードアナリシスという前提的作業を抜きにしてトレーニングプログラムは作れません。また、さまざまなトレーニング種目や方法がそれらの要因をいかに変化させるかといった知識も必要です。そのためには、私たち研究者にもこのような要因間の関係を明らかにする研究データを発表することが求められているといえるでしょう。
これで当分ストレング&コンディショニングコーチの需要が高まりこそすれ、マニュアル本に取って代わることはなさそうです。逆に言えばそれだけ常に勉強する必要がありますが。


(コーチングクリニック 1997年12月号掲載内容を一部改定しました。長谷川)


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